けみすとのきまぐれ - 化学の基本概念 |
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chem |
およそ化学反応というのは、電子の振る舞いが鍵になっている。だから、分子のなかで電子がどういうふうに分布しているか、そして反応する時にどのように電子が移動するのか、ということを、よくイメージすればいい。有機化学は、特にそうだ。
分子の中で電子がどういうふうに分布しているかを知るには、電気陰性度が手がかりになる。最強がフッ素で4.0、次いで酸素が3.5、窒素が3.0、炭素が2.5、水素が2.1。この数字、電気陰性度は、その原子がどのくらい強く電子を原子核に引きつけようとするかの目安だ。覚えておくと便利。数字が大きいほど強く引っ張り込む。特にフッ素、酸素、窒素は三強だ。100余りある元素の中でもっとも大きな電気陰性度を持ち、水素結合を作る。
電気陰性度と合わせて知っておきたいことは、正電荷と負電荷は引き合う一方、正電荷同士、負電荷同士は反発するということだ。とても基本的だけど、どことどこが反応するかの重要な手がかりになる。同じ符号の電荷を持った部分は近づきにくいが、違う符号を持つ部分同士は引き合って近づき、時として引き続き化学反応を起こす。こうして起こる反応では、電子が密に存在し負電荷を持つ原子から、電子が少なく正電荷を持つ原子へ、電子が動いて結合ができたり切れたりする。
無機化学だと、イオン化傾向が重要だ。これも、電子の振る舞いに関する情報だ。
エネルギーについて考えることも大切だ。電磁気学の見方でいえば、電子は原子核に近いほど安定である。ある1つの原子については、1価の陽イオン<中性の原子<1価の陰イオンの順に安定である。
化学反応が自発的に進む場合、反応の前後でエネルギーを比較すると、反応前より反応後の方が安定な物質だ。
化学平衡も大切な概念だ。可逆反応について考えるときに特に威力を発揮する。
いくつかの基本概念を挙げた。それぞれ、もっと言葉を尽くす必要があるから、挙げただけでここでは詳しく説明しないけれど。電子のこと、エネルギーのこと、化学平衡のこと。もういくらかあるかもしれないが、とりあえず。化学を勉強していて新しいことを知ったとき、必ず、基本概念にそってその理由を考えてみてほしい。「へえ、こんなことがこの世で起こるんだ。どうしてこんなことが起こるんだろう?」といった具合だ。(別に化学に限ったことではないけれど、)「なんでかな?」と考えてほしい。そうやっていくうちに、次第に視界が開けてくるだろう。
けみすとのきまぐれ - molという単位(1) |
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chem |
前書き:ROMっていたけど何か書いてみたくなった。化学が好きだから、気が向くにまかせて化学がらみのことを適当に書いてみる。一応間違ったことは書かないようにと気をつけるけれど、抜けがあるかもしれない。
molという単位を知るのは高校化学の最初の山、らしい。自分も初めはよくわからなかった。だいたい、「山だ」とか先生が自分で言っておきながら、「鉛筆12本を1ダースと言うのと同じ」とかいう妙な説明するし、理解する前にもう話が先に進んでるのが良くない。ったくなんでややこしい単位なんか使うんだ。そのワケは、化学反応の仕組みにひそんでいる。
科学では、よく何かを測定する。重さとか長さとか時間とか。化学だと、重さを量るのしょっちゅうだ。この薬品何グラムとその薬品何グラムを混ぜたら、反応して何が何グラムにできました、という具合。
でも、測れるのは重さだけ。化学反応では原子・分子がぶつかりあって反応が進むのだから、その薬品の重さではなく、その中にいくつの原子・分子が詰まっていて、そのうちいくつがぶつかりあって反応するのかが知りたい。重さと同時に個数が重要なのだ。
でもやっぱり、測れるのは重さだけ。じゃあ、重さから上手いこと原子・分子の数を求められないものか、と昔のエラい人は考えた。
まず思いつくのは、「原子・分子1個の重さが分かればいい」。原子・分子1個の重さで測った薬品の重さを割れば、その薬品何gの中に何個の原子・分子が詰まっているか計算できる。そして、いくつの原子・分子が反応するか分かれば、反応で出来る原子・分子1個の重さを掛けて、反応後に何が何gできるか分かる。
例えば、水はH2Oだ。水素原子2個と酸素原子1個で出来ている。原子の重さはほぼ原子核の重さ(電子は原子核よりずっと軽いから無視してOK)だから、原子核の重さだけ考えよう。
・水素の原子核は陽子1個
・酸素の原子核は陽子8個と中性子8個
で出来ている。ついでに、陽子と中性子の重さは大体一緒だから、H2O分子1個の重さは陽子18個分だ。一方、陽子1個の重さは 1.673×10-24gだ。これは過去の科学者たちが測ってくれた。すると、H2O分子1個の重さは 3.011×10-23gだ。じゃあ、水1gには、1[g]÷(3.011×10-23[g])=3.320×1022個の水分子が詰まっているってわけだ。うまいこと、分子が何個あるか分かった。よしよし。
同じようにナトリウム1gには何個のナトリウム原子が詰まっているか計算すると、2.599×1022個だ。
水分子2個とナトリウム原子2個が反応すると、ナトリウムイオンと水酸化物イオンが2個ずつ、それから水素分子が1個できると分かっている。じゃあ、水1gとナトリウム1gを反応させたら、そのうちの何個が反応するかな。さっき個数を計算したけど、数字を見るとナトリウム原子の方が少ないから、ナトリウムが全部反応して水がちょっと余るってことが分かる。
じゃあ今度は、この反応で水素分子が何g発生するか計算してみる。水素分子1個の重さは3.346×10-24gだ。反応する水分子とナトリウム原子はそれぞれ2.599×1022個だから、水素分子は2.599×1022÷2=1.300×1022個発生する。ということは、1.300×1022[個]×3.346×10-24[g]=0.0435gだ。43.5mg、ほんのちょぴりだね。
この調子で、何と何が何グラムずつ反応して何が何グラムできたってのをいくらでも計算できる。でも、なんか面倒じゃないか?陽子の重さまで考えないといけないし、ノートにはいちいち×1022とか書かなくちゃならない。1022とかバカでかい数字じゃなくて、もうちょっと計算しやすくて比較もしやすいぐらいの大きさの数字になってくれないものかな。ついでに、陽子の質量をいちいち思い出さないでも済むといいな。そうすれば、陽子と中性子合わせて何個かだけ知ってればOKだから。
そこで、molの登場と相成った。どうするのかというと、あらかじめ陽子と中性子合わせて12個である炭素原子が12gあるとして、そこにいくつの炭素原子が詰まっているか計算しておくんだ。おっと、ここでいきなりなんで炭素原子なのか?それは……まあ、あれだ、オトナのジジョウってやつだと思ってくれ。別に、陽子1gが陽子何個なのか計算しても本質的には同じなんだけど、そこには有効数字とかE=mc2と絡んだ深い物語があってね。
脱線してしまった。なんだっけ、炭素12g中の炭素原子の個数を数えておくってところまで書いた。この個数をひとつの基準としようってわけだ。「炭素12g中の」ってところがミソで、12という数字は炭素原子の陽子と中性子を合わせた数に等しい。さて、個数を計算すると6.02×1023個。これを1molと定義しよう。つまり、
1mol = 6.02×1023(個)
という具合だ。世界基準だぜ。ちなみに、アボガドロ定数という。覚えておくといいよ。昔、アボガドロさんっていう化学者がいたんだ。
陽子中性子合計12個の炭素原子12gは炭素原子6.02×1023個ということは、同じ調子で、
・陽子1個の水素原子だと1gで6.02×1023個=1mol
・陽子と中性子合計16個の酸素原子は16gあれば6.02×1023個=1mol
という具合だ。陽子と中性子の数の合計は「質量数」だね。質量数にgをくっつけただけでそこに6.02×1023個つまり1molの原子が詰まっていると分かるわけだ。今度は分子で考えてみよう。水分子はH2Oだ。質量数の合計は18。だから、18gで1molだ。水素分子H2だと2gで1mol。おっと、普通は「質量数」ではなくて「原子量」を使う。大概はほぼ同じだけど、かなり違う物もあるから要注意。脱線しまくるのでここに理由は書かないよ :-p